本の話【2】 槙田雄司『一億総ツッコミ時代』
槙田雄司さんとは、お笑い芸人のマキタスポーツさんのこと。
本の内容をざっくり言うと、SNSの普及や「お笑い」が社会的立場を獲得したことによって、日本人は他人の粗捜し(=この本で言う「ツッコミ」)に躍起になっている、というもの。
本の中で特に印象に残った内容がある。「思い通りに事が進むほど、思い通りにいかないことが起きた時にイライラして、他人を責める『ツッコミ』になってしまう。人生、思い通りにいかないものだと許容する心を持ちながら生きていかないと楽しめないよ」、とのことだ。
今年の正月、僕は旅行で岩手県に行った。餅食文化が根付く岩手県の宮古地方でよく食べられているという、くるみのたれで食べる餅が大好きで、お土産にたれを買っていこうと思った。
初日にスーパーへ寄ったら売っていたけど、「最終日に買えばいいや」と思ってスルー。ただ、ここからが思い通りにいかなかった。
最終日の昼食は、多種多様な餅で構成された定食がある一関市の道の駅に行った。一関市は「餅のまち」とPRしているし、定食にくるみだれの餅もあるし、たれも買えるだろうと思っていたら、売っていなかった。
「餅のまち」の道の駅でなぜくるみだれが売っていないのか、とその時ひとツッコミを入れてしまったが、盛岡までレンタカーを返しに行く間にスーパーへ寄ればいいやぐらいの気持ちでいた。
が、帰りは降り積もる雪のせいで高速道路が使えず、一般道も渋滞になり、予約していた新幹線に間に合うかどうかの瀬戸際に。結局、車を返すのに必死でスーパーへ寄れず、くるみだれは買えなかった。
翌日、ネットで色々検索したものの、こんなネットショッピング全盛の時代であるにもかかわらず、売っていない。銀座にある岩手県のアンテナショップに行っても、一関で食べたようなたれと同じものはなかった。初日に寄ったスーパーでたれを買わなかったことを、かなり後悔した。
「思い通りにいかないものだと許容する」という文言を見て、当時の記憶が甦ってしまい、くるみだれの餅が食べたくなってイライラした。
そのストレスをどうにかして解消しようと、今年のバレンタインデーは妻にリクエストして、岩手で食べたくるみだれを再現して作ってもらった。とてもおいしかった。
思い通りになるように助けてくれる人の存在はありがたい。